Home Column OAIBOX 40を使って負荷試験をやってみた コラム技術コラム2024.07.11 OAIBOX 40を使って負荷試験をやってみた これまでにOAIBOXという製品の紹介とOAIBOXを用いた無線通信におけるインターネット接続実験についてご紹介してきました。本記事では、OAIBOX40を用いて行なう通信負荷実験についてご紹介します。 実験準備 本実験ではOAIBOXとOAIBOX購入時に付属するユーザ端末モジュールのQuectelを使用した有線での通信を行ないます。以下に今回使用した機材をまとめました。 OAIBOX 40 Quectel RM500Q-GL(OAIBOX付属品) Quectel RM500Q-GL制御用のノートPC(別途用意) ubuntu 20.04 Intel Core i7-9700K at 3.0 GHz, 16 GB RAM 上記の機材を付属のケーブルで接続します。 図1. 本実験の試験環境 OAIBOX 40はインターネットに接続するためにLANケーブルを接続しておきます。あとは電源を入れて任意のPCでダッシュボード画面を表示するだけで、gNBとCN5Gの起動と停止をクリック一つで操作できます。 また、Quectelを制御するために必要なソフトウェアは、ダッシュボード上の「Downloads」から取得できます。インストールは、ダッシュボード上の「5G Lab Manual」からダウンロードできるマニュアルを参考に実行します。 Linuxの場合、インストールしたソフトウェアをコマンドライン上で実行することで、QuectelのUEモジュールを起動できます。 接続状況の確認 ダッシュボード上の表示についての説明は前回の記事をご覧ください。OAIBOXとUEの両方を起動すると、ダッシュボード上にアタッチしたUEの"IMSI"アイコンが表示されます。 図2. ダッシュボード上の画面 負荷実験 OAIBOXとUEの間で通信が確立している場合、ダッシュボード上の操作と表示されるコマンドの実行によって、アップリンクおよびダウンリンクの負荷試験を行うことができます。 ダッシュボード上のOAI-EXT-DNアイコンをクリックすると、以下のコンフィグレーション設定用のウィンドウが表示されます。 図3. 負荷試験実行画面 Uplink Testでは、UEからOAIBOXに対してアップリンクの負荷試験を実行するためのコマンドが表示されます。Port番号を入力し、プロトコルをTCP/UDPから選択した後、Startボタンを押すと、UE側のPCで実行する2行のコマンドが表示されます。1行目はUEとOAIBOXの間のルートを確立するためのコマンドであり、2行目はiperfコマンドです。負荷試験の時間長や結果表示の時間間隔、目標帯域幅などについては、iperfコマンドのオプションで設定できます。 Downlink Testでは、OAIBOXからUEに対してダウンリンクの負荷試験を実行します。帯域幅、送り先のIPアドレス、ポート番号、およびプロトコルを設定した後、Startボタンを押すと、Uplink Testと同様にUE側のPCで実行する2行のコマンドが表示されます。 アップリンクおよびダウンリンクの帯域幅の最大値はOAIBOXの製品によって異なるため、こちらをご確認ください。 双方向のiperfを動かした状態でのビットレートのリアルタイムの変化は以下のようになりました。 図4. iperf試験中のビットレートのリアルタイム変動 また、ダッシュボードの "Open Speed Test" アイコンからOAIBOXとUEのスピードテストを実施することも可能です。UEを接続しているPC上でダッシュボードの"Open Speed Test"アイコンの↗をクリックすると、新規タブでOpenSpeedTestのページが開かれます。OpenSpeedTestのページでStartボタンをクリックするとスピードテストが開始されます。 図5. 左: ダッシュボード上のアイコン 右: OpenSpeedTestページ スピードテストを開始すると、ダウンリンク、アップリンクの順で帯域の限界に達するレベルの負荷が与えられます。試験中の負荷については、OAIBOXのダッシュボード画面でもリアルタイムに観察することができます。 また、OAIBOX 40ではgNBの帯域幅を20MHzと40MHzから選択することができます。 以下に、帯域幅を20MHzと40MHzに設定した場合のビットレートを示します。 図6. 帯域幅20MHzにおけるスピードテスト実行時のビットレートのリアルタイム変動 図7. 帯域幅40MHzにおけるスピードテスト実行時のビットレートのリアルタイム変動 2つの帯域幅設定の結果を比較すると、帯域幅を広げることでスピードテスト実行時のダウンリンクおよびアップリンクのビットレートが約2倍に上昇していることがわかります。また、ダッシュボードを使用せずに直接コンフィグファイルを編集することで、より柔軟な帯域幅の設定も可能です。 まとめ 今回はOAIBOX 40を用いて5G通信の負荷試験を行いました。OAIBOX MAXやOAIBOX O-RANでは、使用するUSRPを変更することで、より広い帯域幅の設定も可能となります。 また、今回の実験では帯域幅の設定のみを変更しましたが、TDDのスロット設定や3GPP周波数帯など、様々な項目をダッシュボード上から変更することができます。 実験のパフォーマンスデータをリアルタイムに収集し、研究結果を迅速に記録・分析できるツールとしてOAIBOX 40を使用した実験のご紹介でした。ご参考になれば幸いです。 OAIBOXOpenAirInterfaceソフトウェア無線 一覧へ戻る 前の記事へ JC-SAT2023渡航記その2 ~楽しい衛星通信の実験をしよう~ 次の記事へ OAIBOX40を使ってスマホで動画視聴してみた 〜無線通信でインターネット接続もできます~ 最新記事 2024.11.26 EXataを用いた5Gシミュレーションのベンチマークテスト 2024.10.04 JC-SAT2023渡航記その4 ~韓国に行ってきた~ 2024.09.18 ミリ波レーダー解析ソフト「WaveFarer」で実施するターゲット推定~FMCWレーダーの概要~ 2024.09.09 電波を見える化 ~フレネルゾーンの可視化~ 2024.08.30 電波伝搬シミュレーションと3Dモデル 1/2~3Dモデルの調達や作成方法とは?~ 関連記事 2023.08.01 28GHz無線通信実験(その2) ~OSSベースのミリ波5G基地局~ 2024.06.13 Remcomと構造計画研究所の技術交流~米国Remcom本社訪問のご報告~ 2023.05.18 EXataで多接続の端末通信を模擬 2023.09.25 より測定に近い電波伝搬シミュレーションを実現実践!フェージングシミュレーション 2023.12.08 Wireless InSite ver.3.4の新機能 ~RIS反射・透過板機能のご紹介~