お客様事例電波伝搬シミュレーション

ミリ波レーダー解析ツール「WaveFarer」導入事例

新潟大学山田先生
プロフィール
新潟大学 工学部工学科
知能情報システムプログラム 教授 山田寛喜氏
新潟大学について
設立:1870 年
  
所在地:新潟市
  
ホームページ:https://www.niigata-u.ac.jp/

社会における電波の有効活用のため、長年先進的な研究に取り組んでいる新潟大学工学部山田研究室。
2020年に、研究のさらなる効率化と進展のため、ミリ波帯まで解析可能なレーダー解析ツール「WaveFarer」を導入した。
教授の山田寛喜氏にWaveFarerを使用した感想やメリット、今後の展望等を語っていただいた。

ミリ波によるセンシングを専門に研究

まずは山田先生の研究領域について教えてください。

ひと言で言うと、ミリ波によるセンシングです。まだまだ有効活用の余地が残されている電波の新しい利用法や、より使いやすい電波の信号処理の方法について研究しています。
具体的には、ミリ波を使った車載用のイメージングレーダーの実用化やその他の身近な機器への応用、また人物の位置や動作を解析することで高機能なセンシングシステムを構築し、セキュリティ技術やマンマシンインターフェースの向上につなげる研究などを行っています。さらに、マイクロ波リモートセンシングといって、JAXAや NASAなどから提供してもらったデータを解析して、光学センサーでは観測困難な新しい情報を取り出す画像処理手法の研究にも取り組んでおり、地球温暖化と関連の深い森林観測にその技術を活用しています。

その研究にWaveFarerを導入したきっかけは?

元々構造計画研究所(KKE)とは付き合いがあったのですが、ある時 KKE のサイトを見ていた時にWaveFarerを見つけたのが最初のきっかけです。調べてみると、まさに私が研究対象としているミリ波レーダー用のシミュレーターで、レンジドップラープロット作成まで実装している点に惹かれました。KKEに問い合わせてみると、生に近いデータを利用できることがわかり、基本的な電磁界解析ツールのレーダー版として、様々なアプリの開発、研究に活用できるだろうと期待をもちました。
また、レイトレース法をベースとした解析ツールは使い方が難しく、特に波長が非常に短いミリ波ではモデリングや計算時間の制約のため、信頼できる結果を得ることが困難です。一方、WaveFarerはレイトレース法に加えて物理光学近似法も用いることによって、ミリ波帯の解析が手軽に比較的高精度でできるという点が大きな魅力だったので、2020年 8月に一本目を導入しました。



ミリ波帯での大規模な計算が可能

WaveFarerを研究のどのようなシーンで利用しているのですか?

当研究室では、車載レーダーのセンシングを対象として自動車にミリ波の送信と受信のアンテナを積んで走らせる実験や、人に立ったり座ったりと様々な動きをしてもらい、そのデータを取得、解析する研究を行っています。その実験結果のイメージングが現時点ではぼんやりとしか出ていないので、この精度をより上げたい。そのためには実験を重ねるしかないのですが、そのたびに一から機材を全部作るのも、そもそも様々なパラメーターを変えて何度も実験を繰り返すのも、大変な時間と労力を要します。そこで、実際に実験しなくてもコンピュータ上で解析できるツールとしてWaveFarerを使っています。

他のツールでは不可能だったミリ波の解析が可能に

WaveFarerを実際に使ってみて感じたメリットや強みは?

まず、当研究室では元々 FMCW レーダー(周波数変調連続波)を使って実験・研究をしているのですが、WaveFarer にも FMCW レーダー用に処理する機能がついているので、とても利便性が高いという点が挙げられます。
ミリ波による人体の動作・行動解析に関しては、他のシミュレーターでは計算が大変でうまくいかなかったのですが、WaveFarerでは人間の形が何となく判別できるレベルにはイメージングできました。頭、腕、足などきちんと人間の特徴が出るので、イメージングレーダーの効果を調べるならこのレベルで十分。ある程度の定性的な評価には間違いなく使えます。
また、WaveFarer を使えば、PC 上で人間の動作を好きなように設定できるし、人間をパーツごとに分解して動きを見ることもできます。さらに、得られた結果の根拠を物理的に解明したいとき、計算機シミュレーションである特性上、実験ではなかなか分解できない要素まで全部分解できます。
車載レーダーに関しても、パラメーターを変えつつ、様々なトライを重ねれば、標識など物体のイメージングも可能だという手応えを感じています。
さらに、様々な箇所でもっとこうしてほしいという改良をリクエストすれば、将来のバージョンアップで反映してくれるという安心感があるのも大きな強みですね。ゆえに開発者だけではなく研究者も使えるツールだと感じます。大学の場合は電磁界解析の結果に対するニーズが高いのですが、一つ一つの電磁界解析が正確にできても、それを周波数に変えるなど様々なことをしてデータを集めなければ最終的にこの結果にはなりません。そこまでの一連の処理をWaveFarerならレイトレース法と物理光学近似法を組み合わせて非常に早くできるので、使い勝手はとてもいいですね。私のようなレーダーに特化している研究者にとってWaveFarerは非常に強力な武器となります。



物理光学近似法と組み合わせることで、通常のレイトレース法より高度な計算を実現

使用法や操作性に関してはいかがでしょう?

学生でもすぐに使いこなせるくらいなので、使い方は簡単で悩んだことはありません。使いやすさゆえ、導入直後から 1台目が学生に専有されてしまったので、2021年 9月に2本目を追加導入しました。

研究を実験と解析との両輪で進め、社会に貢献

今後の展望について教えてください。

今後、人の動作に合わせてデータを作成して、WaveFarerとうまく連携して解析できれば、大掛かりな実験を何度も行わなくても、PC上で得られた情報に従って研究を進められます。そうすればこちらの立てた仮説を検証しやすくなり、より精度の高い結果を得られるので、そのような使い方をしていきたいですね。
実験だけではなく、WaveFarerによる解析との両輪で研究を進めれば、これまで不可能だった様々なことが可能になると考えています。ミリ波によるセンシング技術は自動車や通信機器だけではなく、家電など多くの身近な製品の品質向上や付加価値創造に活用でき、それによって人々の生活の利便性や安全性の向上に寄与できます。実際に介護やヘルスケア業界からの問い合わせが増えています。
その意味でも電波は今後ますます多方面・他分野にわたって活用が期待されており、WaveFarerはそれに大きく貢献できるツールだと確信しています。

導入された製品
WaveFarer
WaveFarerはミリ波帯まで解析可能なレーダー解析ツールです。 幾何光学近似であるレイトレース法をベースに物理光学近似を組み合わせることで高速・高精度なミリ波帯の解析が行えます。

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