コラム技術コラム2024.11.26

EXataを用いた5Gシミュレーションのベンチマークテスト

EXataを用いた5Gシミュレーションのベンチマークテスト

はじめに

ネットワークシミュレーションソフトウェアEXataを用いて、5Gシナリオシミュレーションの実行速度に関するベンチマークテストを行いました。本テストでは、5GのUE設定数に応じたシミュレーション実行時間の変化や、マルチコア環境での実行効率を評価しました。

使用ソフトウェアおよび使用マシンスペック

ソフトウェア開発元:Keysight Technologies, Inc.
ソフトウェア名:EXata
ソフトウェアバージョン : 8.1.3.0

使用マシン:DELL社製 Precision Tower 7920
CPU:Intel(R) Xeon(R) Gold 6246R 16Core x 2
搭載メモリ:384Gbyte

シナリオ概要と実行時間

シナリオは7セル構成です。1セルにつき、gNBは1台、UEは10台~140台(7セル合計で70台~980台)配置します。セル半径は約650m、5Gのコア網は7つのgNBで共通の一組のコア網としています。
下の図は最大UE数(980台)の配置で各セルの中心にgNB(〇)を、セル内にUE(●)を配置しています。

最大UE数(980台)の場合の配置

シミュレーション設定時間は61秒で、1秒~61秒までの期間にUE一台がUDPパケットを1Mbpsでダウンロードするシナリオです。
このシナリオをマルチコアを使用した実行設定でそれぞれ1コア, 2コア, 4コア, 8コア, 16コア, 24コアで実行して実行時間を測定しました。
シナリオのUE数が増えるとシミュレーション実行時間は長くなります。UE70台の場合は、実行時間はコア数によってあまり変わらず約1分25秒、シミュレーション設定時間が61秒ですから等倍以上の実行時間がかかっています。実行時間が一番長いのはUE980台の1コア実行で6時間10分です。

1,2,4,8,16,24コア使用時のシミュレーション実行時間

1コア実行を基準とした高速化率

マルチコア実行の効果を見るために、1コアの場合の実行時間を基準として、使用するコア数を変化させて実行した場合に何倍速く実行できたのかを、高速化率として計算し確認しました。
2コア実行の場合には概ね1.75倍高速化されています。4コア実行の場合には多少のばらつきがあるものの2コア実行と比較してさらに高速化されています。8コア実行でも4コア実行と比較して高速化が見込めますが、16コア実行では高速化の割合が少なくなり24コア実行では4コア実行程度の効率です。

1コア実行を基準とした高速化率

以上の通り、高速化のためにはコア数が多ければ多いほどよいというわけではなさそうです。というのも、コア数を増やした場合、並列処理によるメリットの一方で、そのオーバヘッドの影響も増えていくからです。

マルチコア実行する場合、EXata内部ではノード単位で複数スレッドに処理が分割されます。他のスレッドで処理されているノードと相互作用が発生する際にスレッド間でデータのやりとりが行われるのですが、このやりとりが多いと実行効率化を妨げるオーバーヘッドとなってしまいます。例えば、本テストのように無線ノードが多く存在するシナリオでは、電波伝搬の計算等のスレッドをまたぐノード同士のイベントが多数発生します。

コア数の選択においては、ノード数などのシナリオの規模に加え、こういったシナリオの性質によるオーバヘッドの多寡も考慮に入れることが重要です。

まとめ

本テストでは、UE設定数やコア数を実際に複数設定し、シミュレーション実行時間の変化の評価を行いました。オーバーヘッドが大きいシナリオにおいても並列化の効果を得られることが確認されました。今回の結果が、皆様の実行環境構築の一助となれば幸いです。

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