コラム技術コラム2024.07.02

オープンソース5G基地局 「OAIBOX」で5G通信研究プラットフォームを構築

オープンソース5G基地局 「OAIBOX」で5G通信研究プラットフォームを構築

Beyond5Gに向けた新たな無線通信技術の社会実装への注目が高まる今、カスタマイズ可能な5G検証環境のニーズは非常に高まっています。構造計画研究所では、実験・研究用のオープンソース5G基地局装置「OAIBOX」の取り扱いを始めました。本記事では、OAIBOXの特徴をご紹介します。

OAIBOXとOAI

OAIBOXの説明の前に、OAIBOXの内部で動作するソフトウェアのOpenAirInterface(OAI)について簡単にご説明します。OAIは、5Gの無線アクセス・ネットワーク(RAN)やコア・ネットワーク(CN)など、3GPPの標準仕様に準拠する5G NR通信の実現に不可欠な機能をサポートするオープンソースソフトウェア(OSS)です。OAIは5Gに関するOSSの中で、最大級のコミュニティ規模と活動頻度を誇り、多くの企業や研究機関で教育や研究、製品開発に役立てられています。

構造計画研究所でも、「第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発」をはじめとする複数のプロジェクトで、5G環境構築にOAIを活用した経験があります。詳細は以下の記事に記載しています。
Beyond 5Gに向けたSDR技術によるミリ波通信システム構築

OAIの課題を解決するOAIBOX

OAIは様々な分野で活用される一方で、いくつかの課題があります。構造計画研究所でOAIを使用する中で、特に以下の3つの課題を感じていました。

  • 利用にあたっての説明書やドキュメントが整理されていない
  • 通信の設定や性能を確認するGUIが洗練されていない
  • ソフトウェア無線機などの実機を接続したシステムとして安定動作させるのが難しい

OAIはその機能の豊富さの反面、有識者でなければ操作方法や出力内容の理解、カスタマイズを行うことが非常に困難です。

図1. OAI の UE(左) と gNB(右) の GUI 表示画面

Allbesmart社のOAIBOXはこれらの課題を解決できる製品です。基地局の操作はダッシュボードというWebブラウザ上のGUIから行うことができるため、OAIの知見を持ち合わせていない方でも5G基地局のセットアップ完了まで簡単に行うことができます。また、5G 標準仕様の教育ドキュメント 兼 使用方法ガイドであるLAB Manualも同梱されているため、5Gの通信技術の学習教材として活用することも可能です。

図2. LAB Manual表紙

OAIBOXを開発したAllbesmart社は、OAI開発コミュニティ内でトップクラスの貢献度を誇る技術者集団です。

OAIBOXでは、OAIの安定動作のためにソースコードのチューニングが行われています。OAIBOXは、Allbesmart社が動作確認を行った5G のRANとCNのバージョンの組み合わせで提供されるため、OAIのバージョンについて悩む必要はありません。

OAIBOXの起動方法とモニタリング画面

OAIBOXの起動方法とモニタリング方法について簡単にご説明します。

OAIBOXをインターネットに接続し、電源を入れるだけで準備は完了です。WebブラウザからOAIBOX専用のダッシュボードを開き、CN5GとgNBの起動ボタンを押すと、5G基地局として動作します。下の画像はCN5GおよびgNBの起動時のダッシュボード画面です。

図3. OAIBOX 起動時画面

接続中のユーザ端末の通信品質は、SNRやビットレートなど様々な指標でリアルタイムにモニタリングが可能です。以下の画像はOAIBOXを購入時に同梱されるQuectelをユーザ端末として有線接続した場合の通信試験の様子です。

図4. OAIBOX_リアルタイムモニタリング画面

まとめ

本記事ではOAIBOXの概要をご紹介しました。OAIBOXにはOAIBOX 40、OAIBOX MAX、OAIBOX O-RANという3つの製品ラインナップが用意されています。それぞれの機能や性能の詳細はこちらをご覧ください。OAIBOXについてのご相談等がございましたら、弊社相談窓口にお気軽にお問い合わせください。

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