ミリ波レーダーによる心拍や呼吸の非接触バイタルセンシングのシミュレーション

概要

  • 本稿では、呼吸と心拍による微小な変位を与えた簡易人体モデルに対して、拡張レイトレース法で解析を行い反射波の位相変化を解析する。
  • ミリ波レーダー/センサーによるバイタルサインモニタリングで必要となる体動の微小な変位の影響が、解析結果に反映されていることを確認する。
  • 電波伝搬解析はWaveFarer(ミリ波レーダー解析ツール)を使用する。

人体モデルとレーダー

  • 人体モデルは、図のような簡易形状のモデルを自作して使用する。
  • レーダーの放射パターンは人体方向に指向性を持つように設定し、周波数は24GHzとする。
  • 人体モデルの胴体部分の寸法は、呼吸と心拍により周期的に変動するようにパラメータを設定する。

呼吸と心拍による周期的な変位

  • ここでは、人の呼吸による体動は比較的滑らかで正弦波に近いと仮定し、変位としては周期5秒で振幅が3 mmのsin波(下図)を設定する。
  • 心臓の拍動(心拍)は正弦波的ではなくパルス状に近いと仮定し、変位としては周期1秒のsin波を2乗したものを最大振幅0.5 mmとなるように設定する(下図)。
  • 呼吸と心拍の変位を足し合わせると下図のようになる。
  • 最終的に、この周期的な変位をパラメータとして人体モデルの胴体部分に与える。

初期位置でのパスの可視化と遅延プロファイル

  • まずは初期位置の人体モデルに対してレイトレース解析を実施する。
  • 計算結果のパスを可視化することで、以下のように電波の伝搬経路(パス)が確認できる。なお、パスの色はそれぞれの伝搬経路での受信電力強度を表している。
  • 今回の解析では人体モデル以外のオブジェクトは配置していないが、室内環境をモデル化することでそれらのマルチパスを可視化することも可能である。
  • 次に、遅延プロファイルを確認する。これは、それぞれのパスのセンサーへの到達時間と受信電力をプロットしたものである。横軸が時間(マイクロ秒)、縦軸が受信電力(dBm)となっている。
  • 各パスはそれぞれ振幅と位相を持っており、今回の解析ではこの遅延プロファイルの全てのパスを合計した位相を求めてその時間変化を見ることとする。
  • なお、シミュレータの設定ではこの遅延プロファイルの時間的な間隔(ビンサイズ)を設定することもできる。そのため、任意のタイミングで帰ってきた反射波のみの位相を取り出すことも可能である。

反射波の位相の時間変化

  • 呼吸や心拍による変位が反射波の位相の時間変化としてどのように表れるかを確認するために、細かく時間を進めながらレイトレース計算を繰り返す。
  • 今回は、0秒から開始して0.01秒の刻み幅で計1000回(トータル10秒間)の解析を行う。0.01秒ごとに人体モデルの寸法が与えられた変位パラメータに従って微小変化することになる。
  • この解析によって得られた10秒間の反射波の位相変化を下図に示す。
  • 人体モデルに与えた周期的な変位と同様の形をしており、微小な変位が位相変化として解析結果に反映されていることが確認できる。
  • 次に、現実の人の動きを想定し、人体モデルの腕を動かして解析してみる。この場合、呼吸と心拍の変位以外に腕の変位の影響が加わるため、位相の変化がより複雑になるはずである。
  • 腕は初期位置から徐々に上げていく深呼吸のような形で動かし、10秒で90度(肩の高さ)まで動かすこととした。
  • 例として、45度まで上げた状態と、90度まで上げ切った状態のパスを以下に示す。
  • それぞれの状態で腕の位置によってパスの伝搬経路に差が生まれていることが確認できる。
  • 最後に、反射波の位相の時間変化を示す。
  • 先ほどの直立のデータと比べると、呼吸による変位は5秒周期の波形として確認できるものの、心拍による変位は腕からのマルチパスの影響で一目ではわかりにくくなっている。
  • これらの結果を踏まえることで、実際の環境下でレーダー・センサーの反射波がどの程度マルチパスの影響を受けることになるのか、その傾向について事前に検討することが可能となる。
  • これらの結果はcsv形式などで生データを出力することができるため、手元でフィルタなどの後処理を加えてさらに検討を進めることもできる。

まとめ

  • 呼吸と心拍の変位を組み込んだ人体モデルを使用して拡張レイトレース法を用いた解析を行うことで、微小な変位とレーダー・センサーの反射波の位相変化の関係を確認した。また、人体モデルの腕を動かすことでそこからのマルチパスの影響の度合いを確認した。
  • 腕の動きのみでなく他の人体の運動を入れ込んだり、室内環境をモデリングすることでより現実に近い状況を再現することが可能である。
  • この一連のシミュレーションでは、ミリ波レーダー解析ツールWaveFarer を使用した。

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