コラム技術コラム2024.06.21

メタサーフェス反射板の反射特性を反映したレイトレース法による電波伝搬シミュレーション

メタサーフェス反射板の反射特性を反映したレイトレース法による電波伝搬シミュレーション

次世代移動体通信とメタサーフェス反射板

5G、6Gの次世代移動体通信では高速大容量な通信のため、高い周波数帯が用いられます。
一方で高い周波数の電波は光のように直進し広がりにくい特徴を持ちます。

そのため次世代移動体通信ではカバレッジ確保のために電波の反射方向を制御するReconfigurable Intelligent Surface(RIS)などと呼ばれるメタサーフェス反射板の活用が検討されています。

メタサーフェス反射板による電波伝搬の概要

レイトレース法とメタサーフェス反射板

広く背の高い建物が建つ屋外や什器が置かれた屋内の電波伝搬シミュレーションではレイトレース法が普及しています。
このレイトレース法は通常、入射角と反射角が同じ正規反射を仮定しており、弊社のRapLabやWireless InSiteといったレイトレースシミュレータも同様です。

しかしながら、メタサーフェス反射板は電波を非正規に反射するため、従来のレイトレース法ではシミュレーションできません。

弊社ではメタサーフェス反射板を計算するために開発した”RISツール”の販売や同ツールを使った受託解析を行っております。
今回のコラムではこの電磁界計算した反射板の特性をレイトレース法に反映するRISツールとその手法についてご紹介します。

メタサーフェス反射板解析の手法について

RISツールはメタサーフェス反射板反射パターンとレイトレースシミュレータ(Wireless InSite)で事前に計算したレイトレース解析結果を組み合わせて、メタサーフェス反射板の反射特性を反映した解析結果を出力します。

メタサーフェス反射板解析のフロー

RISツールを用いて別途用意しておいたRISの反射パターンと事前計算結果を合成して、反射板を経由するレイの電力と受信点の合計電力を計算します。

メタサーフェス反射板反射パターンにはFDTD計算などの手法で計算した反射板の反射電界の結果を使うことが可能です。
これによりEES機能のモデルでは想定していない独自設計のメタサーフェス反射板を計算する事が可能となります。

今回は簡易な検討としてWireless InSiteに実装されている指向性アンテナパターンを用いて準備しました。

メタサーフェス反射板解析結果

次のような屋内において壁に貼り付けたRISに送信機からの電波を正面から入射させ、60°方向に反射させるようなケースを計算してみましょう。

送信機のアンテナは半値幅10°、最大利得23dBiとし、送信電力は27dBmとしました。
また反射2回、回折1回の条件でレイトレース計算を実行しています。

左)屋内モデルの概要/ 右)メタサーフェス反射板の反射パターン

左)メタサーフェス反射板無しの受信電力/ 右)メタサーフェス反射板有りの受信電力

メタサーフェス反射板による受信電力の増加幅

メタサーフェス反射板からの反射パス

反射の届かない領域でRISにより10~40dB程度の受信電力の増幅が見られることが確認できます。
加えて上記の領域でRISを経由したパスの受信電力が他のパスの受信電力よりも強いことをRISツールの計算結果から確認できました。

以上、「メタサーフェス反射板の反射特性を反映したレイトレース法による電波伝搬シミュレーション」でした。

弊社では上記のRISツールの販売やメタサーフェス反射板の解析を受注しております。
また弊社のレイトレースシミュレータWireless InSiteではメタサーフェス反射板を近似的に計算する”EES機能”が追加されました。
このほかにも弊社では目的に合わせた多種多様な電波伝搬解析ツールを取り扱っております。
レイトレース法が利用できる電波伝搬解析ツールについては以下をご覧ください。

弊社の電波伝搬に関する解析事例にご興味がございましたら、こちらをご覧ください。

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