Home Column 任意地点、時刻のGNSS信号を自由に模擬GNSSジェネレータ -SDR-SATの開発現場より- コラム技術コラム2022.12.19 任意地点、時刻のGNSS信号を自由に模擬GNSSジェネレータ -SDR-SATの開発現場より- SDR-SAT は弊社が 2015 年に開発した GNSS 信号ジェネレータです。技術コラムでは、SDR-SAT と、現在行っているソフトウェア構造のリニューアルについての紹介を2回に渡って掲載します。本コラムでは初めに現行 SDR-SAT について紹介します。 SDR-SAT概要 SDR-SAT は弊社がこれまでに培ってきた電波伝搬および無線物理層のシミュレーション技術などを応用して開発した高精度な GNSS 信号ジェネレータです。日時・端末の位置情報などの情報を与えることで、指定した条件における複数衛星の GNSS 信号を簡単に再現できます(図1)。電離層遅延やマルチパスの影響など、環境要因による信号の劣化なども詳細に設定できるので、GNSS 受信機のみならず、多様なアプリケーションの室内での評価が可能です。 図1:SDR-SAT 直観的操作でシナリオ生成可能な GUI GNSS 信号の生成をするために必要な端末情報の登録や環境設定を行う GUI を図2に示しています。画面の左には、端末の経路情報を作成するマップが表示されています。マップはオープンストリートマップを使用しており、作成する経路上をクリックすることで簡単に端末の経路情報を作成できます。画面の右側には日時の情報、環境情報、機器の設定などの項目が表示されます。主な設定事項は次の通りです。 日時 マルチパス・電離層・大気等の遅延プロファイル 信号生成する衛星情報 ノイズ情報 図2:SDR-SAT シナリオ生成画面 更に、GoogleMap などで作成した経路情報などを取り込むシナリオインポート機能を利用すれば、長い距離を自動車や公共交通機関で移動する際の端末の時系列の位置情報を、簡単に取り込んで信号生成することができます。 高精度信号エンジン SDR-SAT のブロック図を図 3 に示しています。信号生成エンジンでは、インターネットから指定された衛星の Rinex 航法ファイルを読み込み、航法メッセージを生成します。これと同時に、Rinex 航法ファイルから得た衛星の位置情報とユーザが設定した端末位置情報ファイル・マルチパス情報を用いて疑似距離、C/A コードを生成します。信号生成部分では、C/A コードと航法メッセージを掛け合わせた後に、遅延、位相変異等を適用することでベースバンド変調信号を生成します。このベースバンド信号を SDR-SAT 内蔵のクロックと同期させて送信することで、GNSS 信号の生成を行っています。 図3:SDR-SAT 信号生成ブロック図 最後に 本コラムでは、SDR-SAT の基本的な機能のみを説明しましたが、実際にはノイズ環境の評価や複数の GNSS 信号を同時に生成したり、測位だけでなく時刻同期の性能評価など多くの場面でも活用できる機能を搭載しています。GNSS の進化とともに、ソフトウェア無線技術の柔軟性を活かして様々な環境を想定した GNSS 信号の生成が可能な SDR-SAT の活躍の場が、今後より増えることを期待しています。次回のコラムでは、現在行っている SDR-SAT のリニューアルの概要を紹介します。 SDR-SATソフトウェア無線 一覧へ戻る 前の記事へ セキュリティコラム – ゼロトラスト・ネットワークにおける組織内ネットワークの見える化 次の記事へ GPUによる電磁界解析の高速化 最新記事 2024.07.24 Wireless InSiteを用いたスループット推定のご紹介 2024.07.19 OAIBOX Open RANのご紹介 2024.07.16 JC-SAT2023渡航記その2 2024.07.11 OAIBOX 40を使って負荷試験をやってみた 2024.07.09 OAIBOX40を使ってスマホで動画視聴してみた 〜無線通信でインターネット接続もできます~ 関連記事 2023.05.18 EXataで多接続の端末通信を模擬 2024.07.01 WaveFarerの解析性能検証~球のRCS解析~ 2023.08.01 28GHz無線通信実験(その2) ~OSSベースのミリ波5G基地局~ 2023.06.30 電波はどのように届く?? 2023.01.18 セキュリティコラム – ゼロトラスト・ネットワークにおける組織内ネットワークの見える化