コラム技術コラム2024.05.21

ミリ波レーダー解析ツール「WaveFarer」で
出力可能な項目とは?

ミリ波レーダー解析ツール「WaveFarer」で<br>出力可能な項目とは?

はじめに

弊社では、主にレーダ等の電波の散乱現象によるシステムを対象とした電波伝搬解析ツールであるWaveFarerというソフトウェアを扱っています。 WaveFarerでは、幾何光学近似であるレイトレース法をベースとして、物理光学近似を組み合わて計算を実施することで高速・高精度なミリ波帯の解析が行えます。

レイトレース法を用いているということで、Wireless InSiteと何が違うの?と思われるかもしれないですが、物理光学近似を用いて通常のレイトレース法では考慮できない正規反射以外の散乱波の計算ができる、というのがWaveFarerの大きなポイントです。

今回のコラムでは、WaveFarerをご紹介した際にご質問をいただくことが多い、WaveFarerではどのような解析結果が出力可能なのか?について紹介します。

RCS解析(平面波を用いた解析)

レーダの電波伝搬解析をする上で当然必要となる、レーダ反射断面積(RCS)を解析できます。勿論、モノスタティックRCS、バイスタティックRCSの両方を解析できますし、計算したい角度もソフトウェアの設定で任意に決めることができます。

RCS解析によく使われる電磁界解析手法(FDTD法や有限要素法等)では、周波数が高くなった場合に、計算量が増え大きな解析対象のシミュレーションは困難です。
一方、WaveFararはレイトレース法と物理光学近似を組み合わせて使用するため、RCS解析において、電磁界解析手法より計算量が圧倒的に少なくなることがメリットです。

WaveFarerには電磁界解析手法のような空間をセルで区切る必要が無いため、高い周波数や大きな解析対象に対するRCS解析で特に強みを発揮します。

モノスタティック / バイスタティックRCS

RCSを計算する場合は、図のように平面波を入射して計算を実施します。

RCS解析、平面波入射

WaveFarerでは、1周360度のRCS解析をしたい場合でもこちらの図のように簡単に平面波入射を設定することができます。角度刻み等のパラメータの調整も可能です。

360度

計算したRCSの結果は下図のように角度に対するRCSのグラフや、遅延プロファイルのグラフ(WaveFarerではHRR(High Range Resolutionと呼称))として表示させることができます。
UI上でグラフを編集することも可能であることに加え、CSV等のテキストファイルとして出力することも可能です。

角度に対するRCSのグラフ(※水平方向5度刻みで解析、解析対象の自動車を半透明として重ねています)

RCS解析、平面波入射

RCS HRR (High Range Resolution)

RCS HRR(High Range Resolution)の出力も可能であり、レイトレース法で計算した伝搬パスを細かい分解能で確認することができます。WaveFarerの出力結果の時間分解能は0.001 nsであり、非常に細かい時間分解能で計算する事が可能です。

RCS解析時のHRRのグラフ(※解析対象の自動車を半透明として重ねています)

360度

こちらの記事でもRCSの解析事例を紹介しておりますので、ぜひご参照ください。

点波源を用いた解析

平面波を用いたRCSの解析だけでなく、点波源を用いた解析も行うことができます。

点波源を用いて計算する場合のメリットは、送受信点を点として自由に配置できることにあります。WaveFarerはアンテナパターンの設定が自由自在で、基本的なアンテナだけでなく、ユーザ定義の任意のアンテナパターンも入力できます。

点波源を用いる場合は、送受信点の位置と、送受信アンテナの諸元や送信電力を設定して計算します。下図に簡易人体モデルを解析対象とした場合のモデルの配置について示します。

人体の解析

WaveFarerの画面では、解析対象とするモデルと点波源およびそのアンテナパターンを表示することができ、アンテナと解析対象との位置関係や、アンテナをどの方向に向けているかを三次元的に分かり易く確認することが可能です。

受信電力、伝搬損失、遅延広がり等

周波数領域の解析結果として、Received Power(受信電力)、Path Loss(伝搬損失)、Path Gain(伝搬利得)、Delay Spread(遅延広がり)などが出力されます。レイトレース法を用いたシミュレータとして基本的な結果は全て取得することができ、各パスにおける伝搬パラメータを確認したり数値解析することができます。

遅延プロファイル(Complex Impulse Response)

時間領域の解析結果として、Complex Impulse Responseも出力されます。こちらに関してもRCS解析と同様に時間分解能は0.001 nsであり、非常に細かい時間分解能で確認する事が可能です。

RCS解析、平面波入射

伝搬パスの視覚的な確認

また、計算した伝搬パスも三次元的に分かり易く、視覚的に確認出来ます。WaveFarerは数値上の結果だけでなく、電波の散乱現象の理解にも役立ちます。

RCS解析、平面波入射

レンジドップラープロット

ミリ波レーダー解析ツールとして必須である、レンジドップラープロットについても出力が可能です。

例えば、図のように車両、道路およびガードレールを設置し、車両の先頭にレーダを設置するケースを考えます。レンジドップラープロットを出力するためには、自動車等の動的な物体が動くことを想定してシミュレーションを行う必要があります。WaveFarerではParameter Sweep機能により、車両の位置をパラメータで設定します。動的なシナリオを非常に簡単に設定することが可能です。設定した動的なシナリオは、アニメーションで確認することが可能です。

RCS解析、平面波入射

続いて、シミュレーションにより出力したレンジドップラープロットの結果が下図です。レンジドップラープロットは、相対速度に対するターゲットの距離を確認することができます。この図から、前方の車両およびガードレールの位置関係を把握することができます。

レンジドップラープロットを作成する過程で、FMCWレーダに関するIQ信号、Sパラメータ等も合わせて出力することが可能です。

rangedoppler

レンジドップラープロットについては、こちらの記事でも紹介しておりますので、ぜひご参照ください。

おわりに

WaveFarerで計算できる出力結果としては基本的には上記となりますが、WaveFarerはスクリプト機能と結果出力の豊富さから複雑な解析への拡張性も高いです。
例えば、位相や受信電力などの条件を複雑に変化させたときのシミュレーションや、人や自動車が動く動的シナリオを含めたシミュレーションを組み合わせて実施することで、出力の幅を大きく広げることができます。

次回は、WaveFarerの精度検証について紹介いたします。

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