自動車衝突防止ミリ波レーダーシミュレーション事例

背景と目的

背景

  • 自動車の衝突防止・対象物判定などの安全運転支援のため、ミリ波レーダーの実用化が進んでいる。また、ミリ波レーダーは先進運転支援システム(ADAS)や自動運転を実現するための重要な技術の一つでもある。
  • 自動車ミリ波レーダーでは、FMCWチャープ信号やMIMO技術を用いることにより、走行車両や歩行者、ガードレール等までの距離や相対速度、角度を検出できる。

目的

  • 自動車走行シナリオにおいてミリ波レーダーシミュレーションを行い、FMCWレーダーによるレンジ・ドップラープロット及びMIMOレーダーによるレンジ・アングルプロットを計算し、距離・相対速度・角度を検出する。
  • シミュレーション手法には、レイトレース法と物理光学近似(PO:Physical Optics)を組み合わせた手法を使用する。POと組み合わせることで、通常のレイトレース法では考慮できない散乱波を計算でき、高精度な計算を実現する。

使用するシミュレータ

  • ミリ波レーダー解析ツール WaveFarer を使用する。

シミュレーション条件

  • 下図にシミュレーションシナリオを示す。初期時刻(0秒)では、レーダー搭載車(セダン)及び対向車(トラック)が速度15m/sで走行しており、交差点に車(ハッチバック)が一時停止している。車(ハッチバック)はトラック通過後に加速度4m/s2で発進する。各車両は初期時刻から6秒後まで移動する。
ACASRADAR_車両位置初期時刻
車両位置(初期時刻(0秒))
ACASRADAR_車両位置6秒後
車両位置(6秒後)

 

  • 以下のFMCWチャープ信号のパラメータを設定する。
ACASRADAR_FMCWパラメーター

距離・相対速度検出結果

  • 下図に初期時刻(0秒)と3秒後のレンジ・ドップラープロットを示す。各時刻における対向車(トラック)、車(ハッチバック)、ガードレールまでの距離と相対速度が検出できている。
ACASRADAR_RDP初期時刻
レンジ・ドップラープロット(初期時刻(0秒))
ACASRADAR_RDP3秒後
レンジ・ドップラープロット(3秒後)

道路の拡散散乱によるクラッタの影響

  • 自動車レーダー受信信号へのクラッタ(不要な電波)の原因の一つに道路や地面の粗さによる拡散散乱がある。
  • 以下では道路に拡散散乱モデルを適用することで、レンジ・ドップラープロットへの道路粗さによる拡散散乱のクラッタの影響を評価する。
  • 下図に初期時刻から3秒後の拡散散乱なし/ありの複素インパルス応答(左図)及びマルチパス状況(右図)を示す。道路の拡散散乱によるクラッタの影響が見られる。
ACASRADAR_CIR拡散散乱3秒後
左図:複素インパルス応答、右図:マルチパス状況

 

  • 下図に初期時刻から3秒後の拡散散乱なし/ありのレンジ・ドップラープロットを示す。道路の拡散散乱によるクラッタの影響が広範囲で見られる。
ACASRADAR_RDP拡散散乱3秒後
レンジ・ドップラープロット(左図:拡散散乱なし、右図:拡散散乱あり)

MIMOレーダーによる距離・角度検出結果

  • 下図のような3素子の送信アンテナ、4素子の受信アンテナを持つMIMOレーダーを使用して、レンジ・アングルプロットを計算する。
ACASRADAR_MIMOレーダー

 

  • 下図に初期時刻(0秒)と3秒後のレンジ・アングルプロットを示す。各時刻における対向車(トラック)、車(ハッチバック)、ガードレールまでの距離と角度(クロスレンジ距離)が検出できている。
ACASRADAR_RAP初期時刻
レンジ・アングルプロット(初期時刻(0秒))
ACASRADAR_RAP3秒後
レンジ・アングルプロット(3秒後)

まとめ

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