住宅街におけるLPWAの適応範囲の検討
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背景と目的
「LPWA」とは
- 「Low Power Wide Area」の略称であり、IoT(Internet of Things)やM2M(Machine 2 Machine)向けとして注目されている無線通信技術である。
- IoTでは、低コストによる運用が求められていることから、デバイスの小型化・省電力が重要視されているが、LPWAは1回の通信で扱うデータ量を小さくすることで、低消費電力で広域通信を可能としている。
- LPWAには多数の種類があり、それぞれの通信方式の特徴を下記にまとめている。
名称 | Sigfox | LoRa | Wi-SUN | LTE-M | NB-IoT |
---|---|---|---|---|---|
免許 | 免許不要帯域を使用 | 免許帯域を使用 | |||
利用周波数帯 | サブGHz帯(920MHz) | LTE帯域 | |||
送信電力 | 20mW | - | |||
受信感度 | -140~120dBm程度 | - | |||
通信距離 | 数km~数十km | 数百m | 数km~数十km |
解析の目的
- LPWAは広域通信に適していると言われているが、現状ではその適応範囲の情報は、実証試験やカタログ上にしかない。そのため、事前検証を十分に行うことができずに、どの通信方式が適しているか不明な場合が多い。
- さらに、導入を進めても「通信が途切れる」となってしまった場合、原因究明の方法が現場での調整、もしくは自由空間方式による推定式に委ねられてしまうことが多い。
- 事前検証としてシミュレーションを活用できれば、個々の環境に合わせた導入を進めることが可能である。
- 今回は住宅密集地を想定し、LPWAを導入する際の検証を行った。
解析対象
- 構造計画研究所がある新中野駅(東京メトロ丸の内線)周辺の住宅街、約3.5km四方を対象に、レイトレース法を使って解析する。
- 通信方式は、LPWAの中でも免許不要の周波数:920MHz、送信電力:20mWを対象とする。
- 比較として、自由空間方式(距離減衰)による計算も行った。
-
今回は3次元電波伝搬シミュレータ
Wireless InSiteを使用した。

新中野駅周辺の建物モデル
解析条件
解析条件
-
レイトレース法の解析条件は下記の通りである。
- 周波数:920MHz
- 送信電力:20mW
- アンテナ:無指向性アンテナ
- 送信点の位置:ビルの端、屋上から2mの高さ(高さ:24.75m)
- 受信点の位置:5m刻みでメッシュ状に配置、高さ1m
-
反射・透過・回折回数
- 最大反射回数:5回
- 最大透過回数:0回
- 最大回折回数:1回
- 計算時間:約15時間


結果
- 自由空間方式(距離減衰)では全ての範囲で-90dBm以上の受信電力となったが、レイトレース法では建物による影響が見えた。
- レイトレース法では、建物環境(建物の密集度、道沿いなど)によって、受信電力が変化した。
- レイトレース法と自由空間方式(距離減衰)では、最大60dBほどの差がみられた。
レイトレース法と自由空間方式(距離減衰)によって計算した、受信電力マップを下記に示す。


まとめ
- 自由空間方式(距離減衰)のみでの検証では、周辺環境の影響が考慮されないため、使用する際には注意が必要である。
- 建物が密集していたり、高い建物がある環境では、受信電力値が下がる可能性が示唆できた。
- 道沿いでは、電波が飛びやすい傾向が見られた。
- シミュレーションによって、個々の環境による検証が可能である。
- 電波伝搬シミュレーションには、3次元電波伝搬シミュレータ Wireless InSite を用いた。

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