3GPP Indoor Hotspot モデルのシステムレベルシミュレーション

背景と目的

背景

  • ローカル5G技術は工場やオフィス等の屋内環境での利用が期待されている。
  • 屋内環境におけるシステム性能の理解と評価を目的とし、3GPPではIndoor Hotspotモデルを含む複数のモデルが既定されている。
  • 各国のベンダーによりIndoor Hotspotモデルを用いたリンクレベルシミュレーション評価が行われている。

目的

  • EXata/QualNetを用い、リンクレベルで同等の評価を行うことが可能であることを示す。
  • EXata/QualNetを用いることで、さらに上位のシステムレベルの評価を行うことが可能であることを示す。

使用する解析ソフト

  • ネットワークシミュレータ EXata/QualNet を使用する。

解析条件

  • EXata/QualNet上でIndoor Hotspotモデルの構築を行う。
property
表1. シミュレーション条件
model
図1. ノード配置
  • gNBのアンテナ形状のうち、abstract beamformingのアンテナ素子数が4の場合と32の場合の計2シナリオを評価例として作成し、SINRおよびスループット、遅延について評価を行う。

解析結果

  • UE毎の集計結果を示す。

PHY層

  • 各UEにおけるgNBシグナル受信時のSINR平均値を示す。
  • アンテナ素子数32においてより良好な結果を示した。
図2.png
図2. SINR平均値

MAC層

  • UE毎のHARQ平均再送回数を示す。あるパケットの再送が起こらなかった場合を0、1回起こった場合を1とし、UEごとに全パケットの再送回数の平均値を取得し、CDFグラフとした。
  • DL方向はビームフォーミングのためか、ともにさほど再送は発生しなかった。
  • UL方向についてはアンテナ素子数32の場合においてより再送が少ない結果となった。また、いずれにおいても1回以上再送を行うパケットが多いことが読み取れるが、これはUE間干渉の影響と推測される。
図3.png
図3. HARQ平均再送回数(DL)
図4.png
図4. HARQ平均再送回数(UL)

アプリケーション層

  • スループット、パケットロス率ともにアンテナ素子数32について、素子数4と比較し良好な結果が得られた。
  • これはPHY層のSINRの差と、それに起因するMAC層のUL方向HARQ再送回数の差が要因として挙げられる。
図5.png
図5. スループット平均値
図6.png
図6. パケットロス率

  • さらなる分析として、UEからgNBへのHARQ ACK/NAKの到達率やgNBにおける再送期限切れによるパケット破棄の回数の解析等も有効である。

まとめ

  • ネットワークシミュレータ EXata/QualNetを用い、3GPPにて既定されているIndoor Hotspotモデルの再現を行った。
  • 比較評価の実施例として、リンクレベル(PHY層、MAC層)、システムレベル(MAC層、アプリケーション層)におけるシミュレーション結果を示した。
  • 本シミュレータを用い、同様に Indoor Factory (InF)、Urban Macro (UMa)、Urban Micro (UMi)、Rural Macro (RMa) といった環境の再現・評価も可能である。

参考文献

  • [1] 3GPP TR 38.901 "5G; Study on channel model for frequencies from 0.5 to 100 GHz" version 17.0.0 Release 17
  • [2] R1-1703534 "Evaluation assumptions for Phase 1 NR MIMO system level calibration" 3GPP TSG RAN WG1 Meeting, February 2017

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