無線による転てつ機状態監視システム構築のための置局検討

概要

  • 鉄道車両を1つの線路から他の線路に分岐させる分岐器を動作させる電気転てつ機は、列車の安全安定輸送に大変重要な装置である一方、保全に多大な労力がかかることが課題である。
  • よって、無線を利用した電気転てつ機の状態監視システムを構築するCBM(Condition Based Management)化への取り組みが各鉄道事業者で活発になっている。
  • 本稿では、電気転てつ機からのデータをWiFiで送信し集約することを想定するにあたり、データ集約用の基地局の配置検討を行う。
  • 配置検討は受信電力の値によって評価し、計算にはレイトレーシング法の解析ソフトであるWireless InSiteを使用する。

 

FDTD法により計算したアンテナパターンを活用して解析を行う。

解析モデルについて

  • 実環境を意識した状態監視システム構築にあたり、転てつ機数が20を超える比較的規模の大きい駅を選定した。
  • 駅中央部に駅舎およびホーム、駅北部に12台、駅南部に17台、計29台の転てつ機データを収集するシステム構築を想定する。
  • 駅構内は南北に約550m、東西に約100mと細長く、鉄道駅特有の状態を模擬している。
  • 駅舎および駅周辺の建物モデル化にあたり、国土交通省のオープンデータであるPLATEAU[1]のモデルを活用した。
  • 建物モデルの精度はLOD1であり、平面の形状に高さ情報を加えたシンプルな箱型モデルである。
  • レールは金属のため散乱体となる可能性はあるが、今回の検討では基地局を駅舎・ホーム屋上に配置するため基地局受信電力への寄与が小さいと考えモデル化はしない。

 

  • アンテナパターンは、FDTD法により計算したアンテナパターンのうち、配置パターン③を選択した。
  • アンテナパターンを下図に示す。
  • アンテナはダイポールアンテナであり、転てつ機のロック確認窓横の付近の転てつ機本体から50mm離した位置に配置している。

 

解析パターンについて

  • 状態監視システム構築にあたり、技術的側面からのコスト試算は大変重要である。
  • 今回は、①駅中央部に1つ基地局を配置するパターンと②駅北部と駅南部に基地局を1つずつ、計2つ配置するパターンにおいて基地局の受信電力を計算することで検証した。
基地局配置①
  • 基地局配置①は駅舎屋上に基地局(ダイポールアンテナ)を1つ配置し、29台の転てつ機のデータを収集するパターンである。
  • 実環境で分岐器横に配置される電気転てつ機の向きを考慮し、駅北部、駅南部にそれぞれ図のような向きでデータ送信用のアンテナを配置した。
  • 送信電力は、2.4GHzWi-Fiの最大空中線電力である10dBmとした。
  • 転てつ機毎の基地局の受信電力をグラフに示す。
  • グラフより550m×100mの駅構内において29台の転てつ機を1つの基地局でデータ収集を行うにあたり、概ね-90dBm以上の受信電力を確保できていることを確認した。
基地局配置②
  • 基地局配置②は駅ホーム屋上に基地局(ダイポールアンテナ)を北部と南部に1つずつ、計2つ配置し、転てつ機のデータを収集するパターンである。
  • 北部の基地局は12台、南部の基地局は17台の転てつ機データを収集する。
  • その他条件は基地局配置①と同様とした。

  • 転てつ機毎の基地局の受信電力をグラフ(基地局配置②は×)に示す。
  • 基地局配置①と比べて、基地局の受信電力が全体的に高いことが確認でき、全ての転てつ機からの状態監視データを-75dBm以上で受信できることを確認した。

まとめ

  • 本稿では、鉄道駅における転てつ機状態監視システム構築のための置局検討を行った。
  • 検証は、FDTD法により計算したアンテナパターンを用い、レイトレーシング法により2つ基地局パターンにおける各転てつ機からの受信電力を計算することにより行った。
  • 受信電力以外にも、伝搬損失や伝搬パス、遅延スプレッドなど様々なパラメータを確認可能である。
  • 加えて今回の検討では、建物データとしてオープンデータを活用可能であることも示した。
  • これまでの一連のシミュレーションには、電磁界解析ソフトXFdtdと3次元電波伝搬シミュレータWireless InSiteの連成により行った。

参考文献

  • [1]国土交通省,  “PLATEAU [プラトー]“, https://www.mlit.go.jp/plateau/
  • [2]多田靖弘,杉山健斗,岡村航,吉敷由起子,"PLATEAU3D都市モデルを活用した電波伝搬シミュレーションの実測との比較による検証",2022信学総大,B-1-7, Mar. 2022.

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