電気転てつ機に設置するWiFiアンテナの配置場所検討のための電磁界解析 TOP 解析コンサルティング サービス 解析事例 電気転てつ機に設置するWiFiアンテナの配置場所検討のための電磁界解析 概要 鉄道車両を1つの線路から他の線路に分岐させる分岐器を動作させる電気転てつ機は、列車の安全安定輸送に大変重要な装置である一方、保全に多大な労力がかかることが課題である。 よって、無線を利用した電気転てつ機の状態監視システムを構築するCBM(Condition Based Management)化への取り組みが各鉄道事業者で活発になっている。 本稿では、電気転てつ機からのデータをWiFiで送信することを想定し、2.4GHzのアンテナ配置検討を電磁界解析によって行う。 電磁界解析にはFDTD法の解析ソフトである XFdtd を使用する。 転てつ機モデル 転てつ機モデルは、解析ソフト上で作成した以下の形状を用いる。なお、モデルは別途CADデータを読み込むことも可能。 本モデルでは、転てつ機の材質はすべて完全導体として模擬している。 アンテナ配置について 転てつ機近傍にアンテナを設置する場合、転てつ機本体の影響によりアンテナ設置箇所によって放射パターンが変化すると考えられる。 アンテナ設置にあたり、保守作業員へ支障しないことは前提条件であるが、鉄道事業者や使用する転てつ機の種類によって最適なアンテナ位置は異なると考えられる。 そのため、以下①~③のアンテナ設置パターンにおいてアンテナ設置箇所の違いによる放射パターンの違いについて検討する。 アンテナ配置① WiFi通信のための2.4GHzのアンテナはシンプルなダイポールアンテナを使用する。ダイポールアンテナの放射パターンは水平面で無指向性であるため、アンテナ配置の影響を確認しやすくなる。 アンテナの設置個所の候補の1つ目として、まず転てつ機の側面(図中の①)を考える。 この配置①にアンテナを設置した場合の3次元放射パターン(転てつ機を含めたもの)は以下となる。 3次元放射パターンは赤になるほど利得が強く、濃い紫になるほど利得が弱いことを表している。パターンは半透明になっており、転てつ機が透けて見えるように表示している。左側が鳥観図、右側が上方向から見たパターン。 この結果から、アンテナから見て転てつ機が無い方向には強い利得を出せているが、転てつ機がある方向では転てつ機自体が電磁波の障壁となり利得が弱くなっている(角度によっては30dB近い差となっている)ことが確認できる。 アンテナ配置② 配置①の結果から、アンテナと転てつ機の位置関係がパターンに大きく影響を与えることが示唆された。 そのため、アンテナの設置個所の候補の2つ目として、配置①よりさらに50 mm転てつ機の側面から離した配置を考える(図中の②)を考える。 これによって、配置①よりも転てつ機とアンテナの距離が離れることでパターンへの影響が小さくなり、よりブロードなパターンになることが予想される。 この配置②にアンテナを設置した場合の3次元放射パターンは以下となる。先ほどと同様、左側が鳥観図、右側が上方向から見たパターン。 見比べてみると、配置①では利得が低かった方向(転てつ機がある方)にもある程度高い利得を出せていることが確認できる。また、極端に利得が低い領域も少なくなっている傾向もみられる。一方で、配置①で強く出ていた方向(転てつ機がない方)の利得は逆に少し弱くなっている。 より比較しやすくするため、水平面のパターン(2次元放射パターン)を切り出し、配置①と②で重ねたグラフを以下に示す。 このグラフを見ても、配置②では転てつ機方向への放射が少し強くなっていることがわかる。 青:配置①、緑:配置② アンテナ配置③ 最後に、転てつ機の側面ではなく後ろ側に配置したモデルの解析を行う。 転てつ機の後ろ側は、側面に比べてより開けているため、さらにブロードになると考えられる。アンテナ配置③は下図のようになっており、転てつ機の後面とアンテナとの間隔は50 mmとしている。 この配置③にアンテナを設置した場合の3次元放射パターンは以下となる。 予想通り、後方に強く出ており、さらに今までの配置と比べてもパターンがブロード(ダイポールアンテナに近い)になっていることが確認できる。一方で、転てつ機がある方向への放射はやはり弱いままである。 水平面のパターン(2次元放射パターン)に配置③を加えたグラフは以下となる。 これを見ると、どの配置においてもやはり転てつ機の影響を大きく受けたパターンとなっていることが確認できる。放射パターンのみを考えた場合は、理想的には転てつ機上部にアンテナを設置することが良いのかもしれないが、実運用上の問題(転てつ機上部の開閉作業の邪魔になるなど)もあるため調整が必要と考えられる。 青:配置①、緑:配置②、赤:配置③ まとめ 電気転てつ機に状態監視システム向けWiFiアンテナを設置する場合の配置位置の検討のために、FDTDによる電磁界解析を行った。 3つのアンテナ配置での放射パターンを比較することで、パターンが転てつ機本体の影響を大きく受けることがわかった。 実際の鉄道施設を含めた電波環境を考慮し、状態監視システムの電波環境をシステム全体で検討するためには、より広範囲の解析領域を計算に含める必要がある。 その場合は、 Wireless InSite によるレイトレース法を用いた電波伝搬解析が効果的である。本稿のように電磁界解析で求めた放射パターンをレイトレース計算に流用することも可能である。 この一連のシミュレーションでは、電磁界解析ソフト XFdtd を使用した。 XFdtd電磁界解析 お問い合わせ 解析事例の一覧に戻る 関連情報 FDTD法を用いた歩幅電圧発生時の人体の雷サージ解析 詳しくはこちら 電波伝搬置局シミュレータ(自由空間伝搬損失) 詳しくはこちら Phased Arrayアンテナシミュレータ 詳しくはこちら SUMO、OpenStreetMapとEXataによるV2Xネットワークシミュレーション 詳しくはこちら カーブや起伏のあるトンネル内のWi-Fi伝搬特性 詳しくはこちら 無線による転てつ機状態監視システム構築のための置局検討 詳しくはこちら