カーブや起伏のあるトンネル内のWi-Fi伝搬特性

背景と目的

背景
  • 近年、列車運行性能向上または設備保守コストの削減のため、「無線を利用した列車制御システム:CBTC(Communications-Based Train Control)*」に関する検討が鉄道業界において活発化している。
  • CBTCに用いられる周波数帯は、既存の列車無線の周波数帯、携帯電話事業者が保有する周波数帯等、様々な周波数帯において検討されているが、地下鉄のトンネルにおいてWi-Fiと同じ2.4GHz帯を用いる事例が存在する。
  • CBTCにおいて、一定時間以上の無線通信の断絶は列車運行に多大な支障をきたす恐れがあるため、電波伝搬環境の把握は大変重要である。

*CBTC:列車が自身の位置を無線で中央制御装置へ送信し、中央制御装置から列車へ停止限界点を無線で送信することで列車制御を行うシステム。

解析の目的
  • 地下鉄特有の環境におけるCBTC(2.4GHz帯)の電波伝搬特性を評価する。
  • カーブや起伏のある地下鉄トンネル内の2.4GHz帯の電波(Wi-Fi)の伝搬特性について実測と解析を比較し、減衰定数を求める。

実測環境

中国ハルビン市の地下鉄トンネルで測定した。

トンネル形状とアンテナ位置

実測の条件は以下のとおりである。

項目
周波数 2.5GHz
送信信号 無変調搬送波
送信電力 10dBm
アンテナ 半波長ダイポール
偏波 垂直偏波
測定距離 1,200m

使用する解析ソフト

    3次元電波伝搬解析ツール
    Wireless InSiteの3次元レイトレース法を用いて受信レベルを計算する。

解析条件

解析条件は以下のとおりである。

解析条件
周波数 2.5GHz
送信電力 10dBm
アンテナ、偏波 半波長ダイポール、垂直偏波
受信レベルの計算間隔 1m
送受信距離 1,200mまで
伝搬経路計算の制限(最大回数) 反射=20、回折=0、透過=0
パス放射間隔 0.05度
トンネル断面 直方体
トンネル材質 コンクリート

実測と解析値の比較

  • トンネル内のWi-Fiの電波伝搬特性(伝搬損失)の実測とシミュレーションの比較を下記に示す。 実測は黒色、シミュレーションは青色で示す。 また、自由空間損失と実測を直線フィッティングした結果(減衰定数0.03dB/m)を示す。
  • 実測と解析値でほぼ一致している。
  • 減衰定数は0.03dB/mとなり、直線トンネルの減衰定数0.0016dB/mと比べて大きな値となる。

実測とシミュレーションの比較

まとめ

  • カーブや起伏のある地下鉄トンネル内のWi-Fiの伝搬特性について実測と解析を比較した。
  • 実測値と解析結果はほぼ一致した。
  • トンネルのカーブと起伏により減衰定数は0.03 dB/mとなり、直線トンネルの減衰定数0.0016dB/mよりも大きく減衰する。
  • 電波伝搬シミュレーションには、3次元電波伝搬シミュレータ Wireless InSite を用いた。

参考文献

  • 吉敷由起子, チン ギルバート シー, 西田賢史,"CBTCのためのレイトレース法による地下鉄駅およびトンネル内のWi-Fi通信波の伝搬特性の評価", 2017 信学総大, B-1-5, Mar. 2017.
  • 山口芳雄, 阿部武雄, 関口利男, "任意断面をもつトンネル内電波減衰定数の近似式について", 電子通信学会論文誌B, 技術談話室, Vol.J67-B, no.3, pp.352 - 353 March 1984.

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