Home Column 【LEO衛星シミュレーション】JC-SAT2023渡航記その2 ~楽しい衛星通信の実験をしよう~ コラム技術コラム2024.07.16 【LEO衛星シミュレーション】JC-SAT2023渡航記その2 ~楽しい衛星通信の実験をしよう~ はじめに 皆様こんにちは、構造計画研究所 電波技術部の古川です。 2023年10月に韓国の釜山にて、開催された国際会議JC-SAT2023に参加してきましたので、体験記に残します。 本コラムでは雑多な内容を中心に書きますので、世の中のどなたかの参考になれば、幸いです。 前回までの記事はこちら ~『そうだ釜山に行こう』~ https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310/ JC-SATとは JC-SATは、電子情報通信学会のSAT研と韓国の宇宙技術学会KOSSTの共催で、日本開催と韓国開催を交互に行っている国際研究会です。衛星通信の研究が多く扱われます。 発表内容 『レイトレース法、降雨減衰と大気減衰をモデルを用いた低軌道衛星通信の性能評価』 https://ken.ieice.org/ken/paper/20231011dCXm/ 研究内容について知りたい人は、予稿をご参照ください。 低軌道(LEO)の衛星通信サービス、STARLINKが使えるか否かを、シミュレーションと実験で評価しています。 楽しい衛星通信の実験をしよう ①実験の概要 近年、低軌道衛星であるLEO(Low Earth Orbit)を使った衛星通信システムが市販されています。例えば、STARLINK社のサービスでは、数万円のアンテナ機材を購入し、月額数千円の契約をすれば衛星経由のインターネットが使い放題です。弊社でも、衛星通信の体験を目的として、STARLINKの機材を調達し、新中野の本所新館屋上に設置しています。 図1 STARLINK屋上の常設設備 STARLINKは高度550kmの軌道に、数千機の衛星が飛んでいて通信網を構成しています。例えば、2023年9月30日12:00の上空の衛星を可視化してみると以下のようになります。 図2 STARLINKの衛星配置 STARLINKを弊社で使ってみたところ、屋上に設置されている状態では、ほぼ安定した通信が出来ました。 一方で、例えば街中に設置された場合にどうなるでしょうか? JC-SAT向けの評価では、STARLINKのアンテナを屋上に設置した場合と街中に設置した場合で通信状況を評価しました。 下図のように、STARLINKのルータにつないだ、小型PCからインターネット上にあるサーバまで通信が行えるか、実際にデータを流して検証しました。 図3 STARLINKを使った実験の構成 屋上での実験は、図1と同じ常設している屋上の環境で行いました。 図4の左側は航空写真、図4の右側は天頂を見上げたものです。 図4 STARLINK屋上の環境のアンテナ周辺 屋上の環境は常設環境のため、社内ネットワーク経由で小型PCにログイン出来るようになっています。 そのため、オフィスの自席から実験を実施しました。 測定しはじめたときは手作業でコマンドを打っていましたが、自動的に測定してくれるようにスクリプトも作成しました。 屋外実験の時には、同じスクリプトを使うことで、効率的に実験が出来ることを期待して書きました。 街中の実験は以下のような環境です。 弊社の駐車場にアンテナを設置しました。通信状況の悪さと作業効率の悪さを考慮し、アンテナを車両の上に配置した実験も行いました。 図5 STARLINK街中の環境その1のアンテナ周辺 図6 STARLINK街中の環境その2のアンテナ周辺 ②設営と実験をしよう 駐車場での実験は意外と準備が大変でした。 駐車場の測定環境の構築のため、屋上から駐車場までSTARLINKのアンテナを移設しました。アンテナ自体が意外と重く、複数人の人手が必要でした。また、駐車場に設置する場合、車に踏まれても大丈夫なように電源ケーブルを保護する必要がありました。実験を行っている旨の張り紙などの準備も必要でした。 実験評価における本質的なことではありませんが、車に踏まれても大丈夫なように養生するものを調達した経験がなく、どうしたものかと悩みました。 結果的に、コードプロテクター、ケーブルガードとかケーブルプロテクターなどのキーワードで検索して出てくる、数千円のものインターネット通販で調達してみました。 届いたものは丈夫なゴムで出来ていて、実験中何度も自動車が上を通りましたが、電源ケーブルは無事でした。 このあたりは、シミュレーションでは経験する機会がないことで、勉強になりました。 図7 駐車場を横切る電源ケーブルとアンテナ 雨が降っても大丈夫なように、電源とPCを入れる防水ケースを用意する必要もあります。 今回は未来工業製のウオルボックスを使用しました。安価で手軽に調達出来るので気に入ってます。 事前に屋内でリハーサルを行い、万全の準備をしたつもりで実験に挑みました。 図8 防水ケースに入れた小型PCとSTARLINKのルータなど 「機器を設置して小型PCにログインして、実験用スクリプトを実行して、動作を確認するだけなので短時間で終わるはず。」 そう考えつつ、椅子や箱などを持ち出し、先ずは最低限の設営と配線を整えました。 図9 最低限の設営 実際に測定を開始しようとすると、スクリプトの動作エラーなども出てきました。 接続された機器の状態や、ネットワーク設定の状態を確認して、少し修正すれば解決しそうですが、 夏の炎天下の屋外での作業は、暑さと日差しと虫刺されなどがあり効率が悪く、解決と測定開始までには想定以上の時間が掛かりました。 短時間で終えるつもりだったため、最小限の物品で挑みましたが、 作業用の机や、液晶ディスプレイの画面が見辛くなる対策を用意するべきでした。反省点です。 この反省を活かし、日を改めた実験では車両内に測定環境を設けました。 机やテントを用意しようかと考えた結果、そもそも駐車場なので、車で実験をするのが最適ではないかと思いました。 図10 車に設置したアンテナと実験装置 車を使うことにした結果、集計作業なども車内から出来て、非常に作業効率良く測定を終えることが出来ました。 屋外実験を行う際には、測定の拠点として車両を用意することをお勧めします。 この実験に利用した駐車場は自社の駐車場のため、比較的自由に測定をすることが出来ましたが、 実験などに使う事が禁止されている駐車場もあるかと思いますので、ご注意ください。 続きは以下より ~『国際会議の原稿を書こう』~ https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310_3/ ~『韓国に行ってきた』~ https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310_4/ 前回までの記事はこちら ~『そうだ釜山に行こう』~ https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310/ ~宣伝~ 弊部では、レイトレース法を用いた3つの電波伝搬解析ソフトを扱っています。 本国際会議で発表したような、衛星の軌道計算と電波伝搬シミュレーションも実施しています。 ご興味ご関心がありましたら、以下よりお問い合わせ下さい。 「WirelessInSite」「WaveFarer」では、イメージング法とレイラウンチング法を組み合わせた精緻で高速な計算を、「RapLab」ではイメージング法による厳密な計算を行っています。詳細は各ソフトの紹介ページをご参照ください。 構造計画研究所の電波伝搬に関する解析事例は、以下をご覧ください。 解析事例 電波伝搬解析 ミリ波レーダー解析ツール「WaveFarer」 研究者向け電波伝搬解析ツール「RapLab」 高速・多機能な電波伝搬解析ツール「WirelessInSite」 社外活動衛星通信電波伝搬解析 一覧へ戻る 前の記事へ OAIBOX Open RANのご紹介 次の記事へ OAIBOX 40を使って負荷試験をやってみた 最新記事 2026.02.18 「MWC Barcelona 2026」に出展します 2025.12.24 OAIBOX のための 5G NR スループット計算 2025.11.17 OAIBOX による5Gネットワークスライシング実験 2025.10.14 OAIBOX mmWaveを使ったSub6/ミリ波帯における 5G無線通信実験 2025.09.29 ミリ波レーダー解析ソフト「WaveFarer」で実施するターゲット推定~屋外シナリオの諸元の変化による推定精度の検証~ 関連記事 2024.06.13 Remcomと構造計画研究所の技術交流~米国Remcom本社訪問のご報告~ 2023.11.14 衛星測位シミュレーションとは?測位精度を予測する技術を紹介 2025.08.12 ITU-R SG3関連会合への参加活動のご紹介 (Participation in the annual activities of ITU-R Study Group 3) 2024.09.09 電波を見える化 ~フレネルゾーンの可視化~ 2024.09.18 ミリ波レーダー解析ソフト「WaveFarer」で実施するターゲット推定~FMCWレーダーの概要~