コラム技術コラム2024.07.31

JC-SAT2023渡航記その3 ~国際会議の原稿を書こう~

JC-SAT2023渡航記その3 ~国際会議の原稿を書こう~

はじめに

皆様こんにちは、構造計画研究所 電波技術部の古川です。

2023年10月に韓国の釜山にて、開催された国際会議JC-SAT2023に参加してきましたので、体験記に残します。
本コラムでは雑多な内容を中心に書きますので、世の中のどなたかの参考になれば、幸いです。
前回までの記事
~『そうだ釜山に行こう』~
https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310/
~『楽しい衛星通信の実験をしよう』~
https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310_2/

JC-SATとは

JC-SATは、電子情報通信学会のSAT研と韓国の宇宙技術学会KOSSTの共催で、日本開催と韓国開催を交互に行っている国際研究会です。衛星通信の研究が多く扱われます。

発表内容

『レイトレース法、降雨減衰と大気減衰をモデルを用いた低軌道衛星通信の性能評価』
https://ken.ieice.org/ken/paper/20231011dCXm/
研究内容について知りたい人は、予稿をご参照ください。
低軌道(LEO)の衛星通信サービス、STARLINKが使えるか否かを、シミュレーションと実験で評価しています。

①今回の概要

さて前回は、衛星通信の実験についてご紹介しました。
実験をしてデータを取ったら、データを処理して評価を行って、学会発表用の原稿を書く必要があります。
学会で発表するまでのプロセスにも、ご興味ある方がおられるのではないかなと思いますので、
今回は手続き、原稿や発表スライドを作成することについてご紹介します。

②学会で発表するまでの流れ

電子情報通信学会の場合、学会で発表するまでのだいたいの流れは以下です。

1. 発表申し込み
日本語の発表タイトル、著者リスト、100字から数百字程度の概要などを決めて、webから申し込みする。

2. 原稿執筆と投稿
A4縦書きで数ページの、研究内容を書いた原稿を作成して、web上にアップロードする。

大会などの一般セッションはA4で1ページ、シンポジウム講演だとA4で2ページです。
研究会の場合は6ページのケースが殆どだと思います。今回のJC-SAT2023は英語で6ページでした。

原稿には、研究の背景や提案手法について記載したり、実験やシミュレーションを行ったデータを処理して、
まとめたものを掲載します。興味を持ってくれた人が研究の内容について知れるように、論文の形にします。

3. 原稿の査読
申し込んだ発表内容と原稿を有識者が審査して、採録(発表出来る)、不採録(発表出来ない)などの判定を下します。
国際会議では査読があるものが多いですが、国内の大会や研究会では、基本的に査読がありません。
JC-SAT2023は国際研究会という位置付けですが、査読がありませんでした。

4. 発表スライド作成
A4横書きのプレゼンテーションの原稿(発表資料)を発表までに準備します。
webには登録しない場合が多いです。

③原稿の書き方

原稿の書き方や発表スライドの作り方について、少しご紹介します。
学会から原稿のテンプレートファイルを入手して、ページ数の指定に合わせて実施した研究の内容について記載します。
図1に、原稿のイメージを示します。実際にJC-SATに投稿したものを縮小したものです。

図1:原稿のイメージ

図1:原稿のイメージ

個人的な経験や、よく見かける原稿では、研究の背景について記載してから、提案手法について説明して、
実験やシミュレーションで実際に提案手法を評価した結果を書き、最後に全体をまとめるケースが多いです。
今回の原稿も同様の流れで書いています。原稿の内訳を図2に示します。

図2:原稿の内容内訳のイメージ

図2:原稿の内容内訳のイメージ

A4の二段組みで6ページの原稿は、書き始めたあたりでは紙面を多く感じることが多いです。
一方で、書き進めていくと、最終的には紙面が足りなくなるケースが多いです。
紙面の調整が必要になった場合は、研究の背景や実験の状況などについて、
どこまで詳細に書くかで調整すると良いと思います。

④発表資料を作って練習しよう

原稿を投稿したら、発表資料を作成します。
基本的には原稿の内容に沿って、プレゼンテーション資料を作るだけですが、
動画やアニメーションなどを使ったり、質問対応用に補足説明のスライドを付けたりします。
図3に発表資料のイメージ、図4に発表資料の内訳のイメージを示します。

図3:発表資料のイメージ

図3:発表資料のイメージ

図4:発表資料の内訳のイメージ

図4:発表資料の内訳のイメージ

⑤発表の練習をしよう

発表資料を作成したら、発表の練習をします。
個人的な英語のプレゼンテーションの練習方法ですが、先に各スライドをどう英語で説明するか、
事前に台詞を考えておいて、台本を起こしておきます。

自然な発音やアクセントを練習するために、作成した台詞をMicrosoft wordに貼り付けて、
音声読み上げ機能を使って読み上げて録音し、何度も聞いて真似して、体に馴染ませます。

その後、スライドを使って発表練習に進むことが多いです。
この練習の過程の中で、説明しにくいスライドや分かりにくいスライドが出て来て、手直しするケースも多いです。

さて、発表の準備も出来ましたので、次回は現地への渡航についてご紹介します。

続きは以下より

~『韓国に行ってきた』~

https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310_4/

前回までの記事はこちら

~『そうだ釜山に行こう』~
https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310/

~『楽しい衛星通信の実験をしよう』~
https://network2.kke.co.jp/column/jcsat202310_2/

~宣伝~

弊部では、レイトレース法を用いた3つの電波伝搬解析ソフトを扱っています。

本国際会議で発表したような、衛星の軌道計算と電波伝搬シミュレーションも実施しています。
ご興味ご関心がありましたら、以下よりお問い合わせ下さい。

WirelessInSite」「WaveFarer」では、イメージング法とレイラウンチング法を組み合わせた精緻で高速な計算を、「RapLab」ではイメージング法による厳密な計算を行っています。詳細は各ソフトの紹介ページをご参照ください。

構造計画研究所の電波伝搬に関する解析事例は、以下をご覧ください。

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