Home Column 数値電磁界解析による雷サージ解析とは?FDTD法による解析技術を紹介 コラム技術コラム2024.05.20 数値電磁界解析による雷サージ解析とは?FDTD法による解析技術を紹介 雷サージ解析技術 雷サージとは、落雷により発生する過度的な高電圧・大電流のことであり、電気設備や構造物ときには人命に被害を与えます。被害低減のためには、雷サージの影響を正確に予測し、適切な対策を講じることが重要です。 雷サージの影響予測には、従来は雷による電気現象を電気回路に置き換える「回路解析法」が用いられてきました。ただ、回路解析法には建物等の3次元構造を正確に模擬できないという課題があります。そこで、近年では、精緻な3次元構造を模擬可能な「数値電磁界解析法」の一つである「時間領域差分法(FDTD法)」を用いて雷サージの影響を予測することが増えています。 FDTD法は、電磁界理論であるマックスウェル方程式を空間・時間領域で離散化して逐次で解く手法であり、従来から無線アンテナ技術の分野では広く活用されています。並列計算が得意なGPUと非常に相性が良く、GPUにより大幅に計算速度を向上させることができ、大規模な解析も高速に計算できることから、雷サージ解析への応用も進んでいます。 雷サージ解析事例 FDTD法による雷サージ解析事例としては以下の①橋梁への落雷解析、②接地電極の等電位化解析、③歩幅電圧解析、④風力発電設備の雷保護解析などがあります。本解析には電磁界解析ツールXFdtdを使用しています。 ①橋梁への落雷解析 落雷後からの橋梁構造内の電流の発生やグラウンディング(アース)の状況等を評価できます。 左図:橋梁モデル(赤矢印が雷電流作用位置)、右図:電流分布(落雷40μ秒経過時) ②接地電極の等電位化解析 落雷後に地盤に逃がした電流により、周辺地表面に危険な電位差が発生しないよう、複数の接地電極を導線で接続する「等電位ボンディング」の効果を評価できます。 左図:接地電極モデル、右図:電位上昇波形 ③歩幅電圧解析 落雷時の砕石(砂利)による歩幅電圧の低減効果を人体内の電流密度から評価できます。 左図:解析モデル、右図:電流密度分布(20μ秒経過時) ④風力発電設備の雷保護解析 風車ブレードのダウンコンダクタの絶縁の効果を評価できます。 左図:風車ブレードモデル、右図:レセプタ付近の電界強度(0.5μ秒経過時) 以上、「数値電磁界解析による雷サージ解析とは?FDTD法による解析技術を紹介」でした。 構造計画研究所では、目的にあわせたシミュレータを複数取り扱っております。 雷サージ解析には以下の電磁界解析ツールXFdtdが対応しております。 電磁界解析ツール XFdtd XFdtd電磁界解析 一覧へ戻る 前の記事へ ミリ波レーダー解析ツール「WaveFarer」で出力可能な項目とは? 次の記事へ 眺めて楽しむ電磁界~自由空間と大地2波~ 最新記事 2024.10.04 JC-SAT2023渡航記その4 ~韓国に行ってきた~ 2024.09.18 ミリ波レーダー解析ソフト「WaveFarer」で実施するターゲット推定~FMCWレーダーの概要~ 2024.09.09 電波を見える化 ~フレネルゾーンの可視化~ 2024.08.30 電波伝搬シミュレーションと3Dモデル 1/2~3Dモデルの調達や作成方法とは?~ 2024.07.31 JC-SAT2023渡航記その3 ~国際会議の原稿を書こう~ 関連記事 2024.07.24 Wireless InSiteを用いたスループット推定のご紹介 2021.11.10 GPUによる電磁界解析の高速化 2024.05.21 ミリ波レーダー解析ツール「WaveFarer」で出力可能な項目とは? 2024.09.09 電波を見える化 ~フレネルゾーンの可視化~ 2024.06.19 Beyond 5Gに向けたSDR技術によるミリ波通信システム構築