Home Column LinuxノートPCで5G環境構築(その1) ~OpenAirInterfaceをノートPCとUSRPで動かす~ コラム技術コラム2023.04.28 LinuxノートPCで5G環境構築(その1) ~OpenAirInterfaceをノートPCとUSRPで動かす~ オープンソースの4G/5GシステムであるOpenAirInterface(以下OAI)の登場により、「無線通信の民主化」が進展してきました。とはいえ、実際にOAIで環境を構築するには様々なハードルが存在していて、まだまだ敷居が高いのではないかと思います。弊社はこの4年程の間、OAIを利用した環境構築のノウハウを積み重ねてきました。本コラムでその一部をご紹介します。 ノートPCの選定 5G環境で使用するPCは、そこそこ高い演算処理能力が必要となります。できるだけ高スペックのCPUを搭載したPCを選んでください。NVIDIA社がOAIに加盟したため、一部の高負荷な演算処理をGPUにオフロードする動きが活発化しているようですが、いまのところGPUは必須ではありません。ただし、CPUについては例えばIntelの第10世代以降のCore i7以上のチップを選んでおくと安心できると思います。OAIはFECなどの高負荷の処理をCPUで行う場合、SIMD命令を使って高速化するコードとなっているので、少なくともAVX2命令を搭載したCPU世代を選択します。ARMのSIMD命令にも対応しているようですがこちらは動作未確認です。 もう一点、大事なことがあります。図 1のように、SDRデバイス(ソフトウェア無線機)を10GbEthernetでノートPCに接続します。10GbEthernet NICを搭載したノートPCは皆無ではないかと思われるので、外付けのEthernet NICを接続するためのThunderbolt 3(or 4)を備えたPCが必須となります。Thunderbolt3(or 4)はコネクタの形状はUSB Type-Cと同じでUSB Type-Cと共通のコネクタで接続するのですが、USB Type-Cよりも帯域が広く、高速な通信が可能な規格です。注意点として、AMDのCPU(Ryzen7など)は演算処理性能は高いのですが、オンチップではThunderboltをサポートしていないため、IntelのCPUを選択することがほぼ必須です。AMDのCPUを搭載したノートPCにUSB Type-Cのコネクタが付いていても、Thunderboltがサポートされていないことがある(というより普通サポートされていない)のでご注意ください。 図1:PCとSDRデバイス(USRP)の接続イメージ ソフトウェア無線機(SDR)の選択 SDRデバイスとしては、動作実績が公開されているNI社製のUSRP(Universal Software Radio Peripheral)を選択することをおすすめします。USRPの他にもソフトウェア無線機の選択肢はありますが、技術情報の入手が難しかったり、そもそもデバイスの入手に難があったりするので、USRPを選んでください。USRPも何種類か選択肢がありますが、5Gの通信を行う場合、以下の製品からの選択となります。 USRP X410 USRP X310 USRP N310 USRP B200/210 それぞれ性能や特性に違いがあるので、目的に応じて選択してください。本コラムではUSRP X310を使った例を説明します。USRP X310はPCと接続するI/Fとして、PCI Express接続か10GbEthernet接続かを選択することができます。今回は10GbEthernetで接続しました。 ノートPC用10GbEthernet アダプタの選択 ノートPCに10GbEthernet NICを接続する場合、選択肢はかなり限られます。実際には以下の2択になると思います。 Thunderbolt3/4対応の10GbE NICを選択 Thunderbolt3/4 I/Fの外付けPCI ExpressボックスにPCIe 10GbEthernet NICを挿して使う 10GbEthernet NIC以外にもPCIeカードを使う場合を除けば、1を選択していただくのが良いと思います。 図2:QNA-T310G1S (https://www.qnap.com/ja-jp/product/qna-t310g1s) Thunderbolt対応の10GbEthernetアダプタも選択肢は限られています。QNAP T310G1Sが比較的入手性が良さそうなのと、Linuxでの実績があることから、弊社ではこの製品を選択しました。この製品はSFP+コネクタを備えていて、USRPとは光ケーブルなどで接続します。なお、T310G1Tという製品もありますが、こちらはRJ-45コネクタを備えていて、安価なケーブルを使用できる反面、レイテンシが大きくOAI&5Gの環境構築には適さないため、ご注意ください。他の製品を選択する場合にも、RJ-45ではなくSFP+コネクタを備えたNICを選んでください。 今回はここまで、続きは2回目をお楽しみに。 OpenAirInterfaceソフトウェア無線 一覧へ戻る 前の記事へ EXataで多接続の端末通信を模擬 次の記事へ SDR-SAT、ソフトウェア構造のリニューアルGNSSジェネレータ -SDR-SATの開発現場より- 最新記事 2024.10.04 JC-SAT2023渡航記その4 ~韓国に行ってきた~ 2024.09.18 ミリ波レーダー解析ソフト「WaveFarer」で実施するターゲット推定~FMCWレーダーの概要~ 2024.09.09 電波を見える化 ~フレネルゾーンの可視化~ 2024.08.30 電波伝搬シミュレーションと3Dモデル 1/2~3Dモデルの調達や作成方法とは?~ 2024.07.31 JC-SAT2023渡航記その3 ~国際会議の原稿を書こう~ 関連記事 2023.12.08 Wireless InSite ver.3.4の新機能 ~RIS反射・透過板機能のご紹介~ 2024.07.11 OAIBOX 40を使って負荷試験をやってみた 2024.08.30 電波伝搬シミュレーションと3Dモデル 1/2~3Dモデルの調達や作成方法とは?~ 2024.02.15 自動車用無線技術におけるシミュレーション技術とは?無線シミュレーション適用例を紹介 2024.09.18 ミリ波レーダー解析ソフト「WaveFarer」で実施するターゲット推定~FMCWレーダーの概要~