コラム技術コラム2023.06.30

レイトレース法とFDTD法の比較(トンネル内電波伝搬)

レイトレース法とFDTD法の比較(トンネル内電波伝搬)

レイトレース法は電波を光に見立てて、直接波や正規反射と回折のパスで近似したものです。おおよその精度はあると一般的には言われていますが、レイトレース法の精度を心配する研究者はまだ多いと言えます。そこで、実際にシンプルなトンネルという環境で、レイトレース法と厳密な解析である電磁界解析(FDTD法)を比較してみました[1]。

モデル

モデルケースは二つあり、一つはトンネルのみのモデル、もう一つはトンネル内に車両を入れたモデルです。トンネルの寸法は断面が4.3 m×3.8 m、長さが100 mです。車両の寸法は断面が2.0 m×2.8 m、長さが20 mです。

トンネルと車両のモデルの寸法

トンネルと車両のモデルの寸法

送受信点の位置

送信点はトンネルの入り口から10 m、高さ2.82 mの位置に、Center(断面の中心位置、トンネル端から1.9 m)とSide(断面の中心位置、トンネル端から1.02 m)の二点を配置しています。受信点はトンネル内部に直線状に10 mの長さで配置してあり、髙さはLow(1.47 m)とHigh(2.82 m)の二通り、トンネル両端からはRightとLeft(それぞれ左右のトンネル端から1.183 m)の二通り、計四通りに配置しています。

送受信点位置

送受信点位置

トンネル内での伝搬利得比較

送信点がトンネル断面中心の場合、FDTD法とレイトレース法はよく一致しています。

Txがトンネル断面中心の場合の解析結果

同様に、送信点がトンネル断面壁側の場合にも、FDTD法とレイトレース法はよく一致しています。

Txがトンネル断面壁側の場合の解析結果

トンネル+車両モデルでの伝搬利得比較

トンネル内に車両が一つある場合、FDTD法とレイトレース法はよく一致しています。

トンネル+車両一つの場合の解析結果

車両が二つの場合でも同様に、FDTD法とレイトレース法はよく一致しています。

トンネル+車両二つの場合の解析結果

下記はFDTD法でのトンネル上面から見た図で、左がトンネルモデル、右がトンネル+車両モデルの結果です[2]。

上面から見た各ケースでのFDTD電界分布

まとめ

FDTD法とレイトレース法では、平均で3 dBの誤差となり、レイトレース法の精度が実証されたといえます。

結果まとめ

[1]Gilbert Siy Ching, Kensuke Tsuda, Yukiko Kishiki,"Comparison of Propagation Characteristics Using Ray Tracing Method and FDTD for Wireless Services inside Tunnels," IEICE Technical Report, AP2012-37, July 2012.
[2]Gilbert Siy Ching, Kensuke Tsuda, Yukiko Kishiki, Masahiko Kawamura, "Field Predictions inside Electrically Large Tunnel with Objects Using FDTD," 2012 IEICE General Conference, Sep. 2012. (Toyama, Japan).

参考:共通の計算条件

周波数やアンテナ、トンネル、車両の材質は以下の通りです。

共通の計算条件

参考:二つの手法の計算条件

レイトレース法とFDTD法で特有の計算条件は以下の通りです。レイトレース計算には電波伝搬解析ツール「RapLab」を、FDTD計算には電磁界シミュレーションソフトウェア「XFdtd」を使用しました。

手法ごとの計算条件

以上、「レイトレース法とFDTD法の比較(トンネル内電波伝搬)」でした。

構造計画研究所では、目的に合わせた多種多様な電波伝搬解析ツールを取り扱っております。レイトレース法とFDTD法を使用した今回の解析ツールは以下をご覧ください。

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